ドイツ学術交流会 (DAAD) の活動/The Work of the DAAD
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2008年12月 (December 2008)

ドイツ学術交流会 (DAAD) の活動

DAAD東京事務所所長 Dr. Irene Jansen(イレーネ・ヤンゼン)
2008年夏、DAADは「国際化なくして大学に未来はない」という信念に基づき、「2008〜2011年アクションプログラム 国際性がもたらすクオリティ」と題した実行計画を作成しました。このプログラムは1996年、2000年、2004年にそれぞれ作られた計画にさらに改良を重ねたもので、国際化をはかる大学の未来に向けた要求に応えるものです。わたしたちは、世界を股にかけ勉学に励む留学生の約10%を受け入れる人気度第3位の留学生受入れ国であるドイツの現在の地位を維持するのはもちろんのこと、2012年までには30万人の外国人留学生の受け入れを目標に大学の国際化に取り組んでいく所存です。 ドイツの大学が共同で設置した独立機関であるDAADは、80年にわたり大学の国際化、また国際化に向けた継続的な取り組みをサポートしてきました。1970年代までの初期の段階では、国際化とは「学生の流動」を意味していましたが、今日ではその意味が「グローバルな競争力と品質保証」へと変化してきています。そのため、ドイツの高等教育機関が、世界中の大学・研究機関との間で大学教育および研究において戦略的な提携関係を結ぶ構造を構築するためのさまざまな助成制度が設けられました(外国との大学の提携、教員引率による学生グループのドイツへの研修旅行助成、3. に述べる東京大学ドイツ・ヨーロッパ研究センター(DESK)もその一例です)。このような提携関係では、履修単位の相互認定や共同学位の設立が行われ、それがまた国際的に通用するカリキュラムの作成、研究および大学教育における創造的・革新的な可能性の向上につながっています。DAADでは、学部卒業生および大学院生を対象とした各奨学金プログラムにより毎年40名前後の日本人に奨学金を給付するほか、個人を対象としない助成制度や、大学間提携という形でさらに250名の日本人を支援しています。 DAADでは以下の5つの活動分野を定めています:
  1. 海外の優れた若い人材向けのドイツ留学・研究奨学金(外国人を対象とした奨学金)
  2. 若手ドイツ人専門家およびリーダーを育成するための海外留学・研究奨学金(ドイツ人を対象とした奨学金)
  3. 大学の国際化に向けた取り組み
  4. 世界各国の大学におけるドイツ学、ドイツ語、ドイツ地域研究の促進
  5. 発展途上国の大学との提携、対話、危機の回避
以下にこれらの活動分野について、特にDAADと日本との提携に言及しながら説明します。本書では特に「1. ドイツでの学業・研究を目的とした海外の優れた若い人材向けの奨学金(外国人を対象とした奨学金)」の1.1〜1.5をとりあげます。本書ではまた提携状況について述べるとともに一般的データも示します。
  1. 海外の優れた若い人材向けのドイツ留学・研究奨学金(外国人を対象とした奨学金)
    1.1. 個人向け短期・長期奨学金

    DAADでは、各応募者から提出された研究計画を検討して、それが勉学・研究面で有意義であるか、実現可能であるかをもとに合格者を厳選し、ドイツでの勉学・研究を目的とする短期・長期(1か月〜36か月)奨学金を毎年30〜40人の日本人学部卒業生に授与しています。出願はオンライン化されています。
    日本の大学を卒業した方、または大学院在学中の方は、修士・博士などのレベルを問わず、すべての人が対象となります。専攻分野によってはすでにドイツ語力を持つことが有利であることは言うまでもありませんが、受け入れ機関での使用言語が英語である場合は、ドイツ語力がなくても応募可能です。
    また、奨学金は、自然科学、人文科学、芸術、音楽などすべての専攻分野が応募の対象となります。さらに、対象となった奨学金に加え、必要な場合は最長6か月までのドイツ語準備コース、旅費や保険が提供され、また場合によってはインターンシップにも奨学金が提供されます(詳細は本ホームページの奨学金の工学専攻者向けDAADタカタ奨学金プログラムをご参照ください)。

    1.2. 客員教授およびグループ研修
    DAADでは、日本人教授を客員教授としてドイツに迎えたいドイツの大学もサポートしています。本ホームページの奨学金の「研究者のための Bilateral Exchange Program」をご参照ください。
    また、ドイツ人教授または日本人教授に引率された学生グループが互いの国を訪問するためのグループ研修旅行プログラムも設けています。ドイツにおける外国人学生の研修/セミナー参加およびインターンシップに対する助成については、本ホームページの奨学金の「大学教員の引率による学生グループ(10-15 名)研修旅行助成」をご参照ください。

    1.3. 大学生および卒業生を対象とした語学研修・夏期講座奨学金(25人)
    日本の大学でドイツ語および関連学科を専攻する学生で、ドイツの大学で開催される夏期講座に参加したい方は、夏期講座奨学金に応募することができます。
    ドイツ関連以外の分野を専攻している学生で、ドイツ語を勉強したい方は、ドイツで開講される語学コースに参加するための奨学金に応募することができます。本ホームページの奨学金の「夏期研修奨学金」をご参照ください。

    1.4. アルムニプログラム
    また、帰国したDAAD奨学生の相互の交流を図ることを目的として、元DAAD奨学生のみならず、ドイツでの留学または研究経験のあるすべての方々を対象にさまざまなアルムニ(卒業生)プログラムが開催されています(www.daad.de/alumni/en/index.html)。DAADの日本人奨学生の多くはドイツの受入れ機関で成功を収めており、帰国後も適切な職種または専門職についています。ドイツに暮らす日本人奨学生の3分の2が人文科学および芸術の分野で、また残る3分の1が自然科学・医学の分野で学業・研究に励んでいます。DAADでは現在、工学専攻者の割合を高めることに特に力を入れています。

    DAADの日本人アルムニ会である DAAD友の会は、現在、会員数1200名を誇り、世界で最も積極的に活動を展開している団体のひとつです。DAAD友の会では独自の奨学金制度を設けているほか、多方面においてDAAD東京事務所の活動をサポートしています。DAAD友の会の名誉会長である石川明 慶應義塾大学名誉教授(法学)は、博士論文執筆のためにドイツに留学されました。また、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団の奨学生としてもドイツに研究滞在されました(アレクサンダー・フォン・フンボルト財団に関する詳細は、WEBサイトwww.humboldt-foundation.deをご参照ください)。

    2008年5月、DAAD東京事務所は設立30周年を祝して、記念行事を行いました。記念式典には特別ゲストとしてドイツ人ノーベル物理学賞受賞者のペーター・グリュンベルク教授も来日されました。30周年記念行事および友の会総会に関する詳細については、WEBサイトhttp://tokyo.daad.de/30jahre/index.htmを参照ください)。

    1.5. 規則策定への関与
    世界的にも最大規模を誇る学術交流組織であるDAADは常に、DAAD奨学生のみならずすべての留学生がドイツ留学中良好な環境で学業に取り組めるようサポートすべきであると考えています。

    その考えに従ってDAADでは、出願手続きの簡略化について規則策定レベルで積極的に取り組んできました。そこで生まれたのがUni-assistです。Uni-assistは留学希望者の出願手続きを簡略化するために設立された認証機関であり、留学生をアシストすると同時に、ドイツの大学にとっても留学生の選考を支援する機関として機能しています。

    またDAADは優秀な学生や研究者のために、厳しいビザシステムや就労許可規制の見直しを強く働きかけてきました。また、DAADはERASMUS MUNDUSといったEU高等教育プログラムのドイツ窓口としての役割も担っています。

    このようにDAADはボローニャ・プロセスを積極的に支援し、国際的な履修単位相互認定制度やダブルディグリー制度に関する取り決めを考案してきました。また、大学間提携などにより共同で設置する博士課程などの課程に対する助成も行っています。DAADはまた、多数の支援プログラムや賞を用意して、大学が外国人学生特有のニーズに対応した課程を設置したり、キャンパスでの地元学生と留学生の交流の場を設けられるよう働きかけてきました。外国人留学生の卒業率を高めるため、DAADは進学適性テスト(TestAS)の開発もサポートしています。

  2. 若手ドイツ人専門家およびリーダーを育成するための海外留学・研究奨学金(ドイツ人を対象とした奨学金)
    http://www.daad.de/ausland/index.en.html , http://www.daad.de/ausland/foerderungsmoeglichkeiten/stipendiendatenbank/00658.de.html?land=31&overview=1&daad=1

    ビジネス・学術の分野でドイツの将来を担う若者たちには世界に通用する能力と、グローバルな問題に立ち向かうための方法についての十分な理解が求められます。そのためDAADはドイツ人学生に対し海外で勉学や研究、インターンシップを経験することを強く働きかけています。その代表的なプログラムのひとつが「日本語学習と企業内研修(SPプログラム)」 http://www.daad.de/ausland/foerderungsmoeglichkeiten/stipendiendatenbank/00658.de.html?detailid=222&fachrichtung=11&land=31&status=2&seite=1です (ドイツ語のみ)。

    またドイツ人卒業生を対象として新しいプログラム「RIKEN-DAAD研究インターンシッププログラム」http://www.daad.de/ausland/foerderungsmoeglichkeiten/ausschreibungen/08070.de.htmlが誕生しました。

    ドイツは2012年までに30万人の外国人留学生を迎え入れるほか、10万人以上のドイツ人学生を世界各国に送り出すことを目標としています。また日本の大学に客員教授として招聘されるドイツ人教授のためのDAAD助成制度もあります。この助成制度により、現在3名のドイツ人教授(法律学)が日本の大学で教鞭をとられています。
    大学教員の短期招聘のための助成については、www.daad.de/ausland/lehren-im-ausland/dozenten/00686.de.html(ドイツ語のみ)を、長期招聘のための助成についてはhttp://www.daad.de/ausland/lehren-im-ausland/dozenten/00687.de.html (ドイツ語のみ)をご参照ください。

  3. 大学の国際化に向けた取り組み
    DAADは、提携関係の構築、共同学位の導入、共同研究などにより大学が国際的なネットワークを築くための助成制度を設けています。その代表的な成果として東京大学の駒場キャンパスにあるドイツ・ヨーロッパ研究センター(DESK)が挙げられます。
    DESKはまた、ドイツ語の課外講義を開講することに加え、東京大学ヨーロッパ学修士課程および日独共同大学院プログラム(IGK)を履修するための支援組織としての役割も担っています。(日独共同大学院プログラム(Internationales Graduiertenkolleg)の詳細はigk.c.u-tokyo.ac.jp/about_010.htmlおよびhttp://www.dfg.deをご参照ください)。

    立命館アジア太平洋大学(APU)の別府キャンパスで学べる日独共同修士環境管理プログラムを修了すると、APUおよびトリア単科大学(ドイツ)の双方から修士号が授与されます。 詳細はhttp://www.apu.ac.jp/home/modules/news/article.php?storyid=371 をご参照ください。

    これらの例が示すようにDAADは、各高等教育機関が国際化に向けて体系的かつ一貫した戦略を策定できるよう支援しています。また、ダブルディグリー導入のために日本や韓国の大学との正式な提携を目指すドイツの大学に対しても助成を行っています。 Partnerschaften mit Japan und Korea

    また、国際協力における大学の組織としてのプロフェッショナルな能力を高めるための情報提供、助言、研修、助成も行っています。

  4. 世界各国の大学における、ドイツ学、ドイツ語、ドイツ地域研究の促進
    海外の大学でドイツ語、ドイツ学、およびドイツに関する知識向上を促進することにより、わたしたちは、活気あふれる現代ドイツのさまざまな情報を発信すると同時に、重要な国際語としてだけでなく、多言語政策の中で学術研究、文化、芸術の分野で幅広く使われる言語としてドイツ語の重要性をさらにアピールしたいと考えています。そのためにドイツ語講師プログラム(現在90カ国以上に500人以上を派遣)を高いレベルで維持し、また、ドイツ学における組織レベルでの提携関係を全世界に拡大していきます。留学で成功をおさめるには言語スキルが重要であり、留学前のドイツ語コースや留学後の学業に並行して行われるドイツ語コースは、電子メディアを介して提供される語学コースも含め、今後さらに拡充されるでしょう。
    オンラインのドイツ語検定試験(ドイツ語のみ) https://www.ondaf.de/ondaf/ondaf_info/home.jsp
    オンラインDUOドイツ語コース http://www.deutsch-uni.com/duo_webshop/en/index.jsp

    上述(1.3項参照)の夏期研修奨学金に加え、DAADは慶應義塾大学の「German as a foreign language(外国語としてのドイツ語)」を担当する教員1名に対する助成を行っています。 DAAD東京事務所は、ドイツ語を話す日本の大学教員および教授で、ドイツの大学と密にコンタクトを取りたいと考える方々との協力関係を強めています。こうした方々の中には自身の大学で率先して「親善大使」の役を買って出てくださっている方もいます。日本独文学会JGG(Association of Germanists in Japan)もまたDAADの緊密なパートナーであり、DAADのドイツ語関連学術諮問委員会と定期的に会合を開いています。

    さらに、東京など世界の主要拠点に「German Houses of Science and Research(科学と研究のためのドイツセンター)」を設立する計画もあります。最大級の海外支部ネットワークを運営するDAADは、仲介機関およびオーガナイザーとしてDFG(ドイツ研究協会)その他の学術研究関連機関と協力しサービスを提供しています。

  5. 発展途上国の大学との提携、対話、危機の回避
    DAADは、国際的競争において指導的地位を獲得するためのさまざまな取り組みを行うだけでなく、発展途上国に対しても責任を持って支援し続けています。今後もこれらの国々が効率的で競争力の高い高等教育および学術研究構造を確立できるよう支援を行っていきます。その中には若手研究者や大学教員に対する助成、助言やコンサルティングの提供、および、ドイツの大学の授業を海外で開講することなども含まれます。また、今後アフリカには「Millennium Development Goals(ミレニアム開発目標)」に向けてセンター・オブ・エクセレンス(中枢的な研究教育拠点)を設置する予定です。経済的・政治的に重要な地位を占める新興国においては、提携関係とネットワーク構築により大きな重点をおいた、新たな複合的プログラムの開発に取り組んでいます。



The Work of the DAAD (Deutscher Akademischer Austauschdienst)

Dr. Irene Jansen, Resident Director DAAD Tokyo

"The university of the future will either be international or will have no future." Based on this conviction, in the summer of 2008 the DAAD laid out an 'Action Programme 2008 - 2011. Quality through Internationality', a further improvement to the programmes from 1996, 2000 and 2004, designed to meet the requirements of the internationalized universities of the future. At the least, we aim to maintain our position as the third most popular host country for some 10% of all globally mobile students and, hence, strive to achieve the target of 300 000 international students by 2012.

For over 80 years the DAAD, a self-governing body of the German universities, has been supporting German universities to shape and constantly increase their internationalization efforts. In the initial stages until the 1970s internationalisation spelled "student mobility", but nowadays internationalization spells "global competitiveness and quality assurance". Structural programs have been established that allow institutions of higher education to entertain strategic co-operation in study and research with universities and research institutes worldwide, a type of co-operation which targets at credit transfer and joint degrees, which formulates curricula of global relevance and raises the creative and innovative potential that lies in research and study. Every year the DAAD sponsors about 40 Japanese in individual scholarship programs for graduates and postgraduates, and another 250 Japanese in the framework of structural programs, partnerships etc.

Five areas of action have been defined:

  1. Scholarships for young international elites to study or research in Germany (Scholarships for Foreigners)
  2. Funding for young German professionals and managers to study and research abroad (Scholarships for Germans)
  3. Internationalising the Universities
  4. Promoting German studies, the German language and German regional studies at universities around the world
  5. University cooperation with developing and transition countries, dialogue and crisis prevention

In the following text the above mentioned action lines will be illustrated with regard to what they mean for DAAD's co-operation with Japan. The focal point of the article, however, will be Action Line 1: Scholarships for young international elites to study or research in Germany (Scholarships for Foreigners), 1.1. - 1.5. The article will also try to take stock of co-operation and provide some general data.